測量・登記手続 大川原哲也土地家屋調査士事務所

土地家屋調査士の視点から見る土地の付加価値を高める測量

 

付加価値とは
 一般的な概念として付加価値とは、「生産過程において新しく生み出される価値」と言われています。解り易いように例えると、100円の食材を買ってきて調理し、それを200円の調理食品として売ることです。この例の場合の付加価値は100円の原価のものが200円で売れた場合、差額の100円となります。
そして、土地の付加価値を高めたい場合においても、解り易いように例えると、現状では家を建てられない状態の土地を坪50万円で買った場合に、許認可申請(許認可取得)して、宅地造成等の建設工事を施し、住宅用地として坪100万円で売ることです。100坪の土地だったとすれば、差額50万円×100坪の5000万円が付加価値となります。では次に、土地の付加価値を高めるには、何が必要になるかを考えます。

 

土地の付加価値を高めるために成すべきこと
 どのような目的にも当てはまるかと思いますが、目的「何をどうしたいか?」が決まったら、その対象物の現状を正確に把握することが必須になってきます。資産価値を高めることや、賃料収益(利回り)及び換金性に重点をおいて簡潔に表現すれば、先ず対象となる土地の現況を明確に把握することです。つまり、@利用価値を見出し、A最適な利用方法を見極め、B安定した賃料収益(利回り)又は、円滑な売却処分に資することを目的とした、不動産の調査・測量(公的図面作成・登記申請)をすることです。今回の投稿では、上記@利用価値を見出すについて説明したいと思います。

 

利用価値を見出す
 これは、対象となる土地の現況(形状、面積、隣接地、接道状況など)を明確にすることによって、法令上の制限の中(許認可)で可能な利用方法(建築や宅地造成など)を把握することができます。そして、面積や敷地形状が明確になることによって、造成工事等にかかる費用も明確になってきます。また、隣接地の買収や、隣接地所有者との共同開発として利用範囲を広げることで新たな利用価値を見出すこと等も、可能となります。

 

一方で、利用価値を妨げる問題を把握する
 近年、新たな価値を見出すことの妨げとなる社会的課題として、所有者不明土地によって公共道路新設等の公共事業の進捗が困難になるケースや、ご自宅の隣接地に倒壊寸前の建物の建っていて不安だが、所有者と連絡がとれない場合などがあります(国土交通省による実態調査結果あり)。自己所有地に対価を支払って、付加価値を高める改修を加えても、隣接地に崩壊寸前の建物が建っていては、実際には売るに売れません。現行制度による対応方法としては、土地収用法による不明採決制度や、民法上の不在者財産管理制度や相続財産管理制度があります。土地収用法による収容採決がされた場合には、所有者不明土地の所有者の意思に関わらず起業者が権利を取得することになります。民法上の対応では、家庭裁判所に申し立てて、財産管理人を選任してもらい不明者の変わりに意思決定してもらうことになります。また、不在者管理人は不在者1人に対して管理人1人を選任するため、不在者が多数の場合には、手続きに過大な時間と労力と費用を要することになります。土地家屋調査士が行う調査には、登記簿上の住所地に所有者が居ない場合には、住民基本台帳や戸籍付票などの調査によって転居先や不明な相続人が把握できる場合もあるので、測量する前に先ず相談してみるのも良いかと思います。

 

いわゆる「負動産」とは
 近年、コロナ渦にあっても投機用不動産の販売件数が安定している傾向が続き、今年9月(令和3年)、上場会社である不動産販売会社が公表した連結決算は増収増益となっています。(決算短信による詳細あり)この背景には、金融政策による「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」により、行き場を無くした莫大な通貨供給量が市中に出回るようになったからです。この資金が、比較的低リスクで相対的に高い利回りが見込める不動産投資へと流れてきていると考えられます。また、国土交通省から発表された2021年の基準価格では、2年連続の下落となりました。一方で、首都圏の新築マンションの平均価格はバブル期を超えたとの結果もあります。このように、不動産の価格の動向が国土全体的に一致しないために、売りやすく、貸しやすい「金のなる木」の不動産と、地域差により、売りにくく、貸しにくい「負動産」に分かれてしまう傾向があります。

 

付加価値とは相対的なもの
 上記で述べてきたように、現状を明確に把握したうえで、【現状よりも付加価値を高める】ことができれば、測量をする価値があると考えて良いと思います。測量をする前に、どのようなメリットがあるのかを把握しておき、メリットが無いと思えばやらなければよいのです。近年のシルバー世代(年金生活者)の中には、土地建物を所有していて住む家はあるが、手元に現金がないとお困りの人たちが大勢います。そして、40年以上前に買った自分の土地の境界標がどこにあって、どのような状態になっているかを把握している方は少ないです。また、40年以上前の公的な図面等の資料も「売りやすさか」ら考えると頼りないものが多いものです。
 土地売却にあたっては、売主の義務として境界を明示してから引き渡さなければならない場合が殆どです。また、買う側からしてみても、正確な公的図面があったほうが「将来の売りやすさ」が増し、住宅ローンなどでお金を貸す側から見ても「お金を貸しやすい」といったメリットが産まれます。


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