測量・登記手続 大川原哲也土地家屋調査士事務所

境界紛争の予防

 

 境界とは、前記事(法的な境界とは)にて説明させて頂きましたが、ある土地が誰のものなのかを示すために、不動産登記法では土地一筆ごとに地番を付することにしています。そして一筆の土地は、私的な売買取引などに際しての単位となります。また一方では、固定資産税や都市計画税などの土地に対する課税の際の単位にもなっています。したがって法的な境界とは、隣接する地番を付された土地どおしを区分する公法上の線をいいます。
 このように、境界はきわめて重要な役割を担っています。したがって、境界紛争の予防といった観点と、境界を調査する専門家としての視点を交えながら考察してみたいと思います。

 

 

自己防衛の意識

 

 各土地所有者自らが、境界の正確な位置を把握して、自己防衛の意思をもって、これを維持管理すことが大切です。現地復元能力があるとされる公的な図面である不動産登記法第14条地図については前記事(境界線が不明確な場合)にて説明してますが、全国で6割弱ほどしか整備されておらず、地域によっても整備状況には偏りがあり、とても十分であるとはいえません。したがって、自分の土地の境界がどこかについて、根拠となる資料と共に、しっかりと把握しておくことが重要です。

 

 

境界復元の重要性

 

 天災、人災等で境界表が毀損、亡失、移動してしまった際には、できる限り早く復元しておくことが、境界紛争の予防に繋がります。近年の震災による境界復元において、我々専門家が行政と連携して、街区全体の境界復元や、個々の土地の境界復元に携わった際には、個々の思い込みによる主張の食い違いや、隣接地所有者間の感情のもつれなどから、裁判にまでなってしまうケースもあったようです。ここで、我々専門家が現地での境界確認に携わる際に重要となるのは、何のために境界を復元するかの説明と、その根拠の示し方にあります。「境界はここです」と指差す前に、先ず境界復元が関係土地所有者全員の利益になることを共通認識するとこが大切です。境界復元が完了して初めて、道路や生活設備の復旧が可能となるのです。そのことを各土地所有者に理解してもらう事が大切なのです。そのうえで、根拠となる資料や、その資料を採用するにいたった経緯などを説明させていただくべきだと考えます。技術や知識といったことよりも、より高度な問題解決能力が問われる職務であることを認識し、日頃から問題解決のスキルを向上させる心がけが必要である考えます。
 このような事例を踏まえると、不明確な状況にある境界線は、早々に復元しておくことが境界紛争の予防になると考えます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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