測量・登記手続 大川原哲也土地家屋調査士事務所

自己所有地の境界標の管理

 

 自己所有地と他人所有地の境界線上に、境界標が存在している場合、それをどのように維持管理すべきかという課題が生じます。つまり、土地の所有者としての境界標の管理義務を、どのように果たせば良いのか具体的な対策を検討しておく必要があります。それには先ず、なぜ境界標を明確にして維持管理しておく必要があるのかを再認識し、土地の現状に即した具体的な方法を選定することになります。

 

 

なぜ、境界標を維持管理する必要があるのか。

 

 近年のインフラ整備的な視点から考えると、境界標の維持管理という問題は非常に抜本的で重要な課題でもあります。つまり、道路や橋梁といった交通インフラから、発電所・変電所・送配電網といった電力インフラなどは、より良い社会発展のための土台となっていて、これらの用地にも境界標があり、維持管理されています。これらに、仮に大地震のように想定害な災害が生じてしまった場合には、これらの生活インフラの復旧が急務となります。復旧作業は原則とし元の状態に戻すことになるので、復旧作業の基準となる境界線の確認も必然的に急務となります。
 一方で、一般の個人住宅地の視点から考えると、隣接地所有者と境界線を共通認識し、お互いの所有権の有する範囲を明確にしておくことに、重点がおかれます。つまり、売買などによって所有者が変わっても、使用収益できる自己所有地の範囲が明確であれば、しいては円滑で安全な土地取引にも繋がるのです。そして、共通認識された境界線で囲まれた範囲に、自らの所有権に基づいた境界標の管理義務が生じているのです。
 また、日常的に行われている道路の補修や電柱の移設などにより、境界標を一時的に撤去しなければならない場合もあり、このような場合に、正しい元の場所に境界標が再設置されているかに注意を払う必要もあります。

 

 

具体的な境界標の維持管理方法とは。

 

 近年実施されている境界標の維持管理方法は、物理的に不動で頑丈な境界標を設置することも重要ですが、これには限界があるので、一般的な代表例として引照点を設置するという方法がとられています。引照点とは、自己所有地の境界標以外の、既設又は新設される恒久的地物(測量点)のことであり、測量により自己所有地の境界標との位置関係を数値的に記録する方法がとられています。尚、引照点はなるべく多く、なるべく広範囲に設置しておくことが望ましいとされています。なぜなら、境界標が紛失する原因が生じた際に、引照点も紛失してしまう可能性があるからです。
 平成30年現在では、日本独自の準天頂衛星システム(みちびき)により、より高精度化した日本国土の観測が可能となり、人工衛星からの観測で、観測点が地球上のどこに位置しているのか誤差数センチの範囲で瞬時に観測がされています。今後、これらの技術を応用した地球座標による境界標の維持管理が浸透していくと予測されます。

 

 

近年における境界標の管理とは。

 

 急激な経済のグローバル化と、急激なIT技術革新が同時に起こる近年においては、どのような分野でも、これで万全の備えなどといったマネジメント(管理)方法は、提唱し難いのが現実とは思われますが、アナログ的な管理(物理的に頑丈かつ不動な境界標の設置)とテクノロジー的な管理(地理空間情報による土地情報の一括管理)の両輪の上で、環境(現場)及び時代(技術)に対応した管理方法を見出していくべきとなのだと思われます。

 


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