測量・登記手続 大川原哲也土地家屋調査士事務所

境界が不明確な場合

 

 長い期間、住宅敷地として使用してきた土地で、建替えや、売却を考えているが、隣地との境界が不明確な場合には、何を根拠に境界線を明確にすればよいのか、という問題が発生する場合があります。
 日本の法律は、境界線を決める基準について規定していないので、裁判の判例などを参考に、境界を現地において明確に表示する判定基準を考えます。
 境界確定訴訟により判決が確定された判例の代表例を要約すると、境界は、現地復元能力をもつ地図・現地に存在する境界標(石杭や境界木など)・占有使用状況・公図及びその他の地図・公簿面積と実測面積の関係・古文書・自然地形・土地の沿革・関係者の証言などを総合的に勘案して判断されています。次に判定基準の要素ごとに説明します。

 

・現地復元能力を持つ地図
 現地復元能力を持つ地図としては、不動産登記法14条1項に基づき登記所に備えられた地図が認められています。この地図に基づいて現地で測量を実施すれば、不明確になっていた境界を「本来あるべき場所」に復元し、明確にすることができます。しかし、法14条1項地図は、全国の約6割程度しか備えられておらず(地域によっては1〜2割程度)早急な整備が必要とされています。

 

・既存の境界標
 現地に既存の境界標があるときは、設置者・設置時期・設置目的が明らかにできる資料があるか、地震や災害又は建設工事などによって移動していないかなどの確認が重要になります。具体的な方法として、法14条地図や、関係者によって実施された測量成果などと一致しているかを確認します。

 

・現実の占有使用状況
 所有する意思を持って、客観的に使用している範囲(境界線)が明らかであることも、境界線を判定するあたり重要な根拠となります。昔の公的な空中写真など、過去の占有状況を明かにする為の資料を集めることも重要です。

 

・公図及びその他の地図
 法14条地図に準ずる図面などで、作成時の測量精度の関係で一定の誤差を含んでおり、現地復元能力は無いとされていますが、土地の位置関係や形状を示す資料として比較的信用できるものとされています。

 

・関係者の文書及びその付属図面
 過去に境界線について、認識の合意をした書面や図面があれば、それも参考になります。

 

 裁判になった場合には、裁判所は、主に上記のような要素を基準にして、訴訟に謳われた全資料を比較検討して、より真実の境界線に最も近いと判断される線を、境界線と定めるとされています。

 

 

境界が不明確な場合どうすべきか
 ご自身が所有されてきた土地の境界線がどこなのかは、おおよその見当はつくかと思います。上記に挙げた資料などを参考に、先ずは隣接の方と話し合われてみるのが良いと思います。話し合われた結果に沿って、専門家に資料調査及び測量を依頼し、境界標を設置しておけば、裁判するまでもありません。話し合いで解決できない場合でも、境界を明確にする必要がある場合には、裁判所に境界確定の訴えを提起して、裁判所で境界を判断してもらうことになります。

 

 

 

 

 

 

 

 


ホーム RSS購読 サイトマップ